「仕事と英語」インタビュー:シェフ 福田浩二(TERRA AUSTRALIS-北参道)後編

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実際の仕事現場で、英語を使って活躍している方にお話を聞く『「仕事と英語」インタビュー』。
今回は、都内の北参道駅近くにあるオーストラリア料理のレストラン「TERRA AUSTRALIS」のヘッドシェフ、福田浩二さんにお話を聞きました。

前編では、全く英語が分からないままニュージーランドで仕事を始めたことや、有名シェフと世界中を回るエピソードなど、海外経験が豊富な福田シェフならではのお話を伺いました。
今回は、海外への長期出張が中心だった仕事のスタイルから、より日本ベースへとスタイルを変更した福田シェフに、「日本の仕事現場での英語」、「海外から日本に来る人たちへの英語」等についてお伺いしました。

記事の前編はコチラからどうぞ
「仕事と英語」インタビュー:シェフ 福田浩二(TERRA AUSTRALIS-北参道)前編


インタビュー:シェフ 福田浩二(TERRA AUSTRALIS-北参道)後編

海外での仕事を経験して、日本に戻ってから思ったこと

福田シェフインタビュー

厨房での福田シェフ

– 日本に戻ってきてから、英語を使う機会はありますか?

(福)知り合った外国人の馴染みの方からの予約は、電話が直接来るんです。それで英語が話せると、色々なコミュニティに誘われますよね。一緒に飲みに行ったりとか、誰かを紹介されたりとか、新しいことを教えていただいたりとか。
ただ、日本に赴任してきた外国の方って結構、日本語を喋れるんですよね。企業で働いている人って、赴任するから、ちゃんと勉強して来ている。偉いな、って思います。
料理人の場合、あまり勉強もせずに海外に行ってしまうので、殆ど喋れない人が多いんです。でも、しっかりした企業で働く人はそういう人が少ないという印象ですね。

– 最近、日本の仕事現場で、英語を使う機会はありましたか?

(福)今度、オーストラリアの有名シェフが来日して、僕も一緒にレストランをやるんですけど、その様子がイギリスのテレビ番組で放送されるらしいんです。日本では放送されないらしいですけど(笑)。
そういうお話って、多分、自分が少しでも英語が出来なかったら呼ばれてなかったな、と思います。

– イギリスのテレビ番組ですか? すごいですね! 海外の方は、日本のレストランに注目してるということでしょうか?

(福)とても注目していますよ。でも結構、取材が難しいらしいです。海外の人からすると、日本の老舗料理店とかに行きたいじゃないですか。寿司屋とか、うなぎ屋とか、焼き鳥屋とか。でも、そういう所って、殆ど英語が通じない。
通訳とかコーディネーターの方でも、料理を知ってて、なお且つ老舗料理屋にまで顔が利く人は、とても少ないらしいですね。だから世界で注目されていて、海外メディアも取材したいけれど、困っているとか。
和食がユネスコの無形文化遺産になったことも影響して、すごく注目されてますね。和食や日本の料理を食べたいがために、日本に行きたいっていう外国の方は、結構多いと思います。

– こちらのレストラン(TERRA AUSTRALIS)でも、お客さんと英語で会話する機会は多いのでしょうか?

(福)ありますね。スタッフがまだあまり英語に慣れていないので、電話で予約が来ると僕に代わったり。出来れば、予約なんて決まったフレーズだけで済む会話ですし、スタッフに勉強して欲しいですけどね(笑)。
料理の素材とか、細かいリクエストとか、イレギュラーなことを聞かれると、わかんなくなりますよね。
ただ、お客様の方も、英語圏ではないと分かっているので、あまり無理難題は言わないし、正確な文法も求めていないんです。通じればオッケー程度で。
だから、喋る努力を見せると、すごく喜んでもらえます。そこを自信がないからと、最初から敬遠しちゃうと、あまり印象が良くないですよね。

– もし、今、働いているスタッフの人たちに英語研修をさせるとしたら、どんなことを学んで欲しい、または習わせたいですか?

(福)難しいことはいいので、最低限の会話っていうか、「レストランでの日常会話」くらいは出来るようになって欲しいです。例えば、今日は良い天気ですね、とか、どこからいらっしゃったんですか? とか、そういうミニマムな話は、楽しんで出来るようになって欲しいですね。せっかくオーストラリア料理のレストランにいるので。
普通のレストランよりも、外国人のお客様の比率が高いので、もうちょっとお客様とコミュニケーションを取りたいな、と思ってもらえれば嬉しいです。

– ではもっと大きな話で、飲食の現場で英語が使えたら、どんな風に仕事に活かせるのでしょうか?

(福)世界に出るチャンス、といった意味で、もっと幅が広がると思います。日本だけじゃなくて。
今働いているオランダ人のスタッフは、奥さんが日本人なので日本語の聞き取りは出来るんですが、話すことは出来ないんです。
自分もニュージーランドでは1年ぐらいそういう状態でした。言ってることは何となく分かるんです。でも言葉が出ない。聞くのと自分から話すのは違うので、難しいですよね。自分から英語が話せれば、チャンスは広がると思います。

– 高校を出て、社会人として一番最初に料理人をしていた時の感覚と、海外で様々な経験を積んでから日本に戻り料理を作っている今の感覚と、やはり大きく違うと感じますか?

(福)いやあ、大分違いますよね。
僕は、自分が海外に出るなんて、これっぽっちも思っていなかったから。社会人になったばかりの当時は、英語に全く興味が無かったんです。一生、喋ることはないだろうと思っていたし。だから、勉強する必要はないと思ってた。
料理人なんだから、料理だけ出来ればいいや、と思っていました。
でも、それで後々、相当苦労しました。

– もし、ニュージーランドへ行く前に、機会があったら、英語をやっておけば良かったと、今なら思いますか?

(福)そうですね。
でも、その反面、人間って結局最後は自分でどうにかするものだな、と思いました。追い詰められれば、人って、上達うんぬんは別にして、何とか生きてはいけるんだなと。
僕にとって英語を使う重要な仕事は、食材の発注ぐらいだったから、ニュージーランドでのびのびやれました。自分だけだったし。でもその分、今でもビジネス英語みたいなフォーマルな場での英語は苦手です。

インバウンド ― 日本に来た外国人との英会話

福田シェフインタビュー

インタビューに答える福田シェフ

– こちらのレストランの仕事では、具体的にどんな場面で英語を使うのですか?

(福)自分からプライベートの話をすることは、あまりありませんが、外国人の方ってお話好きが多いんです。だから、お客様から話しかけられたら、色々と話しますね。オーストラリアの方も多いですけど、この近所に外国の方が沢山住んでいるようで、色々な国の方がいらっしゃいます。
でも殆どの方は、日本語が上手いんです。なので、そこに助けられてる部分もあります。

– 例えば、お客さんが日本語に不慣れな方であれば、英語で返答したり、って事もあるんですか?

(福)そこは難しいんですよね。不慣れではあるけれど、日本語で会話をしたいという方もいるんです。コミュニケーションを取りたいって。そういう時に、英語を喋っちゃうと場違いな感じになりますから。

– なるほど。仕事以外では、プライベートで英語を使ったり、日本にいる外国人の方と交流する機会はありますか?

(福)日本在住で、日本語のできない外国人の友達がいるので、1日に何回かは必ず英語を使います。
やはり仕事柄、オーストラリアの方と知り合うことは多いです。だから、今、オーストラリア文化にどっぷり漬かってます。日本にいるオーストラリア人たちの飲み会とかにも顔出しして。
この間も一緒に、ラグビーを観に行きました。30人くらいの団体の中で、日本人は僕を入れて3人くらい。そういう付き合いの中では、ずっと英語を使っています。

– そういう環境だとご家族、お子さんも、英語に慣れて行きますよね。

(福)実は、娘が英語、大好きなんです。
子供って、耳がいいじゃないですか。だから発音がめちゃくちゃ良いんです。時々、僕が英語を喋っても、通じないのか、ポカンとしていたり・・・。子供って本当にすごいです。
家に外国人の友人が来たりして、英語を喋らせるとすごく顔を輝かせます、興味を持ってるみたいで。だからまだ4歳だけど、英語をやらせたいと思っています。
それに海外に住む日本人家族にありがちなのが、家の中は日本語で、外は英語という環境です。普通、子供って2~3歳でよく喋るようになるんですが、この環境だと全然、言葉が出て来ない。
下手したら5歳くらいまで喋らないんじゃないかと思いました。多分、言葉の意味は分かっているけど、家で英語を使わない分、単語が出て来ないんじゃないかと。
何人か、そうやって、話すのが遅くなっちゃった子を知っています。

– 英語の発音だったり、意味だったり、吸収はしてるけど、考えがまとまらないのでしょうか?

(福)こんがらがってるなって感じはします。
そういう子たちが、ようやく英語を喋り出しても、日本に帰ってくると、全然、英語を話さなくなるんですよね。すぐに忘れるんだと思います。
ただ、もう一度英語の勉強を始めると、戻るのは早いんですよね。発音とか上手いし。だから、子供に英語をやらせて、海外に行かせたいですね。
料理人はあんまりやらせたくないけど(笑)。

今の仕事、オーストラリア料理について

– では最後に、英語から一旦離れて、現在のお仕事のメインになっている、オーストラリア料理について詳しく教えてください

(福)洋食って、ソースのとり方とか、モノの切り方とか、基本的な部分はフランス料理なんです。でも、オーストラリアって建国してからの歴史が、浅いじゃないですか。移民の方がいて、いろんな人が住んでいる。
その移民の方の子供たちが、オーストラリアで生まれて、料理人になった時に、元々住んでいた国のフレーバーが出て来るんですよね。
両親がタイ人だったらタイのフレーバー、インド人だったら多様なスパイス、中東の人だったら中東の料理が混ざった、それなりの洋食になる。日本人だと、味噌を使ったりね。実は、それがオーストラリア料理なんです。
格好よく言うと、自分のバックグラウンドを出すという感じだけど、悪く言えば、芯が無いというか、何でもアリな状態。和食のような、伝統とか洗練ってものは無くて、どちらかと言えば、ファッショナブルな感じで、どんどん移り変わっていくんです。だから伝統はないけれど、自由な分、新しい料理を発想していく楽しさはあります。「こんなことしちゃっていいの?」みたいな。
僕が実際に見た例でいうと、魚に「ふりかけ」をかけて焼く料理を見ました(笑)。
「え?ふりかけ、かけるの?」って言うと、「いや、これお前、知ってる?日本のすごいスパイスなんだよ」って(笑)。
そういうのやっちゃうんですよ。

– すごいですね(笑)。その料理、食べましたか?

(福)これが、旨かった。旨かったんですよ(笑)。
今でも、塩昆布はすごい流行ってますよ。やっぱり日本の食べ物って、美味しいんですよね。それに、ベジタリアンの人って、和食が好きなんですよ。日本料理って、肉がなくても成立するから、そういった海外の人に受け入れられてます。
オーストラリア料理は何でもアリですよ。ためらいが無くて自由で。自由すぎて面白いです。

– オーストラリアでとれる食材はどうですか?

(福)食材はメッチャいいですよ。
国土がすごく広くて。海も山もあって、砂漠まであって。何でも手に入ります。
あと土が肥えてて、こっちだと無農薬とか謳ってるけど、オーストラリアではそれが当たり前で、普通が無農薬なんです。
ただ、魚はよくないんです。新鮮なんだけど、締め方、血抜きの仕方が悪くて、血の周りが悪くなってすぐ臭くなっちゃう。恐らく、刺身で食べる文化じゃなくて、焼いて食べるのが前提だったからだと思います。今では大分、日本の技術が向こうに伝わって変わってきたみたいですね。魚を生で食べることが、オーストラリアでも広まっています。
マクドナルドみたいな感じで、普通にどの町にも何軒か寿司屋さんがある程、和食のお店が増えてきて、小さい子でも箸を使うのがすごく上手なんですよ。
でも、オーストラリアのみなさんが一番好きなのは、中華料理かな。安くて美味しいし、味が濃いのも合うみたいです。

– 例えば、こちらの「TERRA AUSTRALIS」にオーストラリア出身の方が来店して「故郷の料理を食べたい」と言われたら、どういったものを出すんですか?

(福)オーストラリアの食材を結構使わせていただいているので、それぐらいですかね。
肉とか、全てオーストラリアのお肉で、そういう食材が食べられる、という期待をされているのかもしれません。
先日は、オーストラリアのある州政府の人が、その州原産のものを使ってコース料理を作ってほしい、というリクエストがありました。日本の方とオーストラリアの方と半々でいらっしゃったのですが、現地の素材を使った料理をお出ししたところ、とても喜ばれました。

– なるほど。オーストラリアの素材で作ったものが、オーストラリア料理なのかもしれませんね。
それでは、本日は長い時間、ありがとうございました。

(福)こちらこそ、ありがとうございました。


英語が出来ないまま、ニュージーランドで料理長を務め、そこから料理人として世界中をまわり、今は日本のオーストラリア料理のレストランで腕を振るう福田シェフのインタビューでした。
日本の料理人の腕はいい、レベルは高い、日本の料理店も海外から注目されている、しかし英語が使えないために距離があるというお話は、世界で料理を経験された福田シェフならではの視点だと思いました。
海外から注目される日本文化、日本料理を伝えるためにも、英語はますます重要になりますね。
改めて、福田シェフのオーストラリア料理を味わいたい方は、是非TERRA AUSTRALISにお越しください。

■福田浩二/Koji FUKUDA
1972年生まれ。26歳で単身ニュージーランドへ渡り、オーストラリアのスターシェフ、ルーク・マンガンの元で経験を積む。2006年「Salt」(東京・丸の内)総料理長に就任。2016年1月より、「TERRA AUSTRALIS」に参画。オーストラリア政府公認のラム親善大使も務める。

■TERRA AUSTRALIS(テラ・アウストラリス)
http://www.terra.tokyo/
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-29-2
JR「千駄ヶ谷」駅徒歩6分、東京メトロ「北参道」駅徒歩2分

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