「仕事と英語」インタビュー:定森幸生さん1

「仕事と英語」インタビュー:定森幸生

いつもグローバルスカイ・エデュケーションのブログをご覧いただきまして、ありがとうございます。

世界のグローバル化が進み、今後、ますます重要なスキルの一つとなるのが「英語力」。
仕事からプライベートまで、あらゆる場面で英語の必要性が高まる時代になっていますね。

そんな現代社会で、既に実際の仕事現場で、英語を使って活躍している方にお話を聞く『「仕事と英語」インタビュー』。今回は長年にわたって人材開発、特に世界で活躍する人材育成に携われてこられた「定森幸生さん」にお話を伺いました。

インバウンド、アウトバンドに関わらず、海外との関係が濃くなる今、改めて「英語を学ぶ意味」「若い人へ向けたメッセージ」をお聞きしました。


「仕事と英語」インタビュー:定森幸生さん

経理は、グローバルなビジネスの言語。「世界中から」財務状況をジャッジされる時代。

定森幸生さん

定森幸生さん

– 本日はよろしくお願いします。では早速ですが「経済がグローバル化していく」と言っても、業種や役割によっては、現場レベルで今一つ実感が持てない方もいると思います。そうなるとあまり海外を意識することが出来なかったり、英語を学ぶ意味も見出せなかったりすると思うのですが、いかがでしょうか。

(定森さん、以下(定)会社の中であっても、自社の商品が海外マーケットで売られて、日本の本社の決算に反映されるっていうのは、販売現場の方はわかると思うんです。
逆に、昔ながらの人事とか経理とか事務とか、国内取引中心の業務を当面やってらっしゃる方には、なかなかピンと来ないかもしれないですね。

ですが経理っていうのは、既にグローバルなビジネスの言語なんですよ。帳簿を見れば、どこの国の人が見ても、「あ、この会社ちょっとヤバいんじゃない」って、分かるわけですよね。去年利益は出しているけど、経営が上手くいってないなって。
それは、会話でいくら「ここのビジネスは結構良かったですよ」とかいっても、一発で分かってしまうわけですよね。

– 会社の数字を見るという事は、世界基準のものを見ることに繋がる、ということでしょうか?

(定)そうです。ですから数字次第で、褒められるときは世界中から褒められますし、良くない数字は、世界中の誰が見てもすぐに良くないって分かってしまうんです。

近頃、日本でも大分浸透してきていますけど、IFRSっていう、国際財務報告基準というものがあります。
今までは、それぞれの国で、経理的に操作できる部分を、自国の都合のいいところに基準を持っていたんですね。だけど、これだけ仕事がグローバル化してくると、自社で働く社員、財務で関わる人間も様々な国籍の人になります。
すると、それぞれの母国の会計基準を背負った人が入ってくるわけですから、日本の企業の中で『この会計処理、変じゃない?』ってなると、『日本の公認会計士はオッケーって言ってるよ』が通じなくなるんです。『日本はそうかもしれないけどイギリスでは』って、そういうことが起き始めて収拾がつかなくなります。そこでIFRSが確立されました。

だから、もう経理イコール国際基準ということになっているんですよね。経理だけでなく財務もです。そもそも「お金」はグローバルな存在で、金融市場を通じて一瞬のうちに世界中を駆け巡るわけですから。

– 財務という意味では、もう外資と国内企業の区別がつかなくなる様な状況ですよね。

(定)日本国内で創業した上場企業でも、株主の3割以上が外国の投資家になっている会社があります。株主総会の会場自体は東京でも、議案の説明や質疑は英語でということになるかも知れません。外国人株主に対して、経営者が英語で説得できる英語力を身に着けておくことが必要になるかも知れません。
いま日本の多くの上場企業は、日銀の「異次元の金融政策」によって日銀が大株主だそうですから、そういうことがすぐ必要にはならないかもしれないですけど、いつまでもそのままというわけにはいきませんよね。
いま日本の多くの上場企業は、まだ日銀が株主だそうですから、そういうことが一遍には起らないかもしれないですけど、いつまでもそのままというわけには、行きませんよね。
ビジネスは上場したら最後、「今日はまだ日本の株主が多数」だけど・・・、分かんないですよ、5年後はね。

財務がもうグローバルという意味で、世界と関連しているのだから、他の管理部門も、日本流だけでやっていけばいいというわけではないんですよ。

– いつ株主全員が外国人になってもおかしくない状況なんですね・・・。逆にグローバル化が及んでいない所ってあるんでしょうか?

会社の部門の中で、グローバル化の影響が遅れて及ぶのは人事の労務管理の部分です。
主権国家である以上は、国内の労働法が優先されますから。例えば、わが国でいうと、定年を認める、とかね。アメリカのように、定年がないどころか解雇も自由、そういう世界もあるわけですよね。さすがに法律で決められた働き方は、そう簡単には変えられない。

だけど、国内の労働法に沿っただけの社内体制をいつまでも続けると、今度は優秀な人材が入って来ないわけですよね。海外でも通用する働き方を求めた人材が寄り付かず、取り残されちゃうんです。それを考えると、やっぱり企業全体がグローバル化するのは、時間の問題です。

グローバル人材採用のプロが語る「英語力」。実はTOEIC(R)はあまり重視していない!?

定森幸生さんインタビュー

弊社教室での講義の様子

– では今後、世界で活躍したいという方に向けてのアドバイスをお聞きしたいのですが、面接官をされていた時は、どこでグローバル人材を見分けたのでしょうか?基準はあったんですか?

(定)実は、採用の時点では、ほとんど、その時点で持っている英語力は問わないんです。TOEIC(R)で何点、と言われても、あ、そう、それで?という感じで(笑)。

– え、そうなんですか!?

(定)はい、ただ海外と関わる会社の求人で、『TOEIC(R)が何点だったし、この程度じゃだめだろな』と勝手に解釈して、面接さえ受けにいらっしゃらない人が多いことも事実だと思います。私に言わせれば、そんなことは気にするな、ですよ(笑)。

英語能力の試験の多くは、”身長”と”体重”しか計らないものが多いと思います。リスニングとリーディングでしょう。仕事では、リスニングとリーディングという「受け身の力」だけでなく、ライティングとスピーキングという「能動的な力」が欠かせません。
つまり、「読めた」と「聞けた」という力だけで、ビジネスをするっていうのは、何を意味しているかっていうと、下手すると一方通行になっちゃうんですよね。
つまり、受け止めるだけ。だから、例えばTOEIC(R)で分かるのは、いわゆるパッシブ・スキルといって、受け身の力なんですよね。健康診断でいえば、身長と体重で体の大きさと重さを判断するだけ。

それに対してアクティブ・スキルとか、プロダクティブ・スキルとか言いますけど、「書く」「話す」、要は発信する力、これがなければね、特に商社なんか勤まらんわけですよ。健康診断で言えば、筋力とか内臓や骨格のような体の内部の状況を判断しなければ意味がないわけです。

だから、新卒であれば、たかだか21歳半ぐらいの人たち、それまでの間にいろんな過去があったんでしょうけど、その時点の一時的なスナップショットで、『TOEIC(R)が何点だから、この会社を受けるのはやめておこう』とか、とても勿体ない。
逆に言うと、会社やその業種についてその程度の情熱だったら、むしろ受けに来なくていいんですが。

実は、私が採用をしていた会社でも、毎年入社してくる人の7割から8割は、TOEIC(R)のスコアでいうと750点の人とかくるんです。その反面、そうでない、400点台で受かっちゃう人もいるんですよね。

それでも一応社内ルールがあって、3年以内に730か750かくらいかな、それに達しないと社内進級させないよって、ワンランクアップにならないよっていうこと言ってるんですが、まあ、みんなクリアしてますよ。最初は420点でもね。

– では逆に英語力でないところでいうと、採用したいと思われる人材の特徴って、共通のものはあるんでしょうか?

(定)採用の面接で、たかだか20~30分で分かるのは、その人の人格や能力、適性の10%ぐらいだと言われています。
その中でもやはり特徴というと・・・、「ネアカ」の方が良いでしょうね。面接のときは緊張して萎縮してしまうものかもしれませんが、返答の内容がとてもポジティブ、否定文を使わないような人です。

あとは主語を「I=自分」で語る人が良いです。「日本人は」とか「異文化は」なんて、語り出す方もいますけど、文化人類学者になるわけではないんだから(笑)

ビジネス英語はダイナミック(動的)であって、リレーショナル(関係性)なものなので、流動的に、相手によって良い悪いが決まるんです。評論家みたいに語る人もいますが、自分の意見とその背景となる理由を、その時の話題や議論の相手との関係性を判断して、柔軟な会話ができないといけません。几帳面で真面目もいいんですが、遊びの部分がない、実直すぎる人は、お客さんとの関係が築きづらいんです。

グローバルなビジネスはエキサイトメントなもの

定森幸生さんインタビュー

インタビュー中の様子

– では最後になりますが、就職活動をしている若い方の中にも、今はまだ「グローバル」を意識できていない方が多いかと思います。面接のお話もあったので、そうした若い方へのアドバイスはありますか?

(定)仕事に情熱をかける、グローバルなビジネスっていうのは、あなたにとって、ものすごくエキサイトメントなものなんだって、言いたいですね。世界で、一人でも多くの新しい人に出会って、その人に尊敬し尊敬され、助け助けられ、その関係をずっと築けるような、ね。

社会に出て、ビジネスに関わるのは30年なのか40年なのか、これからは50年ぐらいになるのかもしれないけど、グローバルな環境で働くことが50年続くっていうのは、大変なエキサイトメントですよね。

その中で、もしかしたら国際結婚もあるかもしれないし、いろんな出会いの可能性があるわけですよ。そこに対する夢、期待、憧れ。これって、若い人が持つべきだと思います。今までは国内でしか仕事をしなかった大人たちに比べて、圧倒的に長い期間を、世界との仕事に費やせるんです。

私にとってグローバルというのは、「助け合う」、「尊敬しあう」ことと「競い合う」ことです。
勝ち負けを決めて、どこかの国や誰か一人だけが強いということではなく、今、優れているものを持っている人が、それを持っていない人を助ける。助けられた人は、それ以外の面で助けてくれた人が持っていない強みを磨いて、その人を助ける。助け合うことによって、お互いが相手の力量を尊敬し合う気持ちが生まれます。そのうえで、常に切磋琢磨しながら競い合うことで、ビジネスは成り立っているんだと思います。

昨日までは知らなかった人と出会い、関わることで、もしかしたらずっと続く縁が生まれるかもしれません。英語を学ぶことは、そうした世界中の素晴らしい人材と関係を築けるエキサイトメントな塊の中にあるものなんです。

– なるほど、英語を学ぶことで、世界と「競い合い」「助け合い」「尊敬し合う」事ができるようになる、それは本当にワクワクする事かもしれませんね。本日はありがとうございました。

(定)ありがとうございました。


以上が、定森さんのインタビューとなります。
実はこの後も、ご自身の経験や、人材採用に関しての様々なお話を伺いました。その様子は、また後日、公開する予定です。
弊社の淡路町教室での講座も行われますので、興味を持った方はぜひご参加下さい!

定森幸生
1973年慶応義塾大学経済学部卒業、同年三井物産(株)入社。1977年マギル大学(カナダ・モントリオール)大学院経営修士(MBA)取得以降、米国三井物産ニューヨーク本店人事課長代理、三井物産(株)東京本店人事部能力開発室課長等を経て、現在、物産サービス(株)研修事業部主席兼三井物産(株)人事部国際人事室マネジャーを歴任。1990~92年文部省学術国際局の委嘱による留学生政策に関する調査研究協力者会議専門委員。1998~2001年カナダ・マギル大学大学院経営修士課程(MBA)非常勤講師(人事管理講座担当)。2012年に三井物産退職。現在、慶應義塾大学と早稲田大学のビジネススクールで、社会人MBA学生対象に英語でのグロバルビジネス・コミュニケーション戦略の講座を担当。また、明治学院大学経済学部国際経営学科でも、グローバル経営特論などを英語で講義。

著作物に「現地社員活用の手引」(日経文庫)「国際人的資源管理の基礎知識」(産能大学)「これからの海外人事戦略と要員管理の実務」(労務時報連載)など多数。

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